さくらのソーシャルワーク日記

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#4 申請主義の課題を解決するための処方箋 その4〜申請主義を検討する上で重要となるファクターとは その1〜

申請主義とは 〜正しい定義こそが本質的な課題解決のためのスタートラインだ〜 - さくらのソーシャルワーク日記

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前回までの振り返り


本稿は、申請主義の否定や批判は福祉の否定や批判だと述べたところから始まる。その意図するところは、第1回の記事をご覧いただきたい。

 


ここまで(第1回から第3回)、権利侵害(すなわち意思決定における支障)の態様を分類整理する前提として、当事者や社会課題に応じて検討すべきことを述べた。


本稿では、前回に引き続き、権利侵害の態様を分類する上で、重要な要因となる「帰責性」について考えていきたい。

非常にボリュームのある内容なので、複数回に分けてご説明したい。


帰責性とは


ここでいう「帰責性」とは、申請主義において、適切に権利行使することが期待できる状況にあるかどうか、という意味で用いていることにご留意いただきたい。


申請主義に介入する前提として分析的な視点が不可欠

 

前回(第3回)は、申請主義の課題を検討する上で重要な帰責性を議論する前提となる、分析的な視点についてご説明させていただいた。



申請主義は福祉の根幹であり、ここに介入していくことは、極めて慎重にならなければならない

前回ご説明した、分析的な視点が求められているのは、まさにこのためである。

したがって、ソーシャルワーカー、ましてや社会福祉士が申請主義を軽々しく批判、ましてや否定することが許されないことは、繰り返し伝えたい。


さて、その上でということになるが、今回はいよいよ、申請主義の課題を検討する上で重要となる「帰責性」の本質について検討したい。


整理分類の目的は、本質的な問題の発見


帰責性の本質を検討していく上で、「ロジカル」に、その要因を整理分類していくことが必要だ。

理由は明快である。


繰り返しになるが、申請主義の議論は分析的な視点が不可欠だ。

権利侵害に関わる問題である以上、この議論は極めて慎重に議論される必要があるからだ。


そして、これは同時に、申請主義の本質的な課題の一端をあぶり出す作業でもある。


課題を解決する上で、どこに本質的な問題が生じているのか、これを明らかにすることが重要だからだ。


申請主義を検討する上で重要となるファクター

 

帰責性の本質を検討するには、まず、申請主義を検討する上で重要となるファクターについて整理することが重要になる。


申請主義を検討する上で重要となるファクターは、言うまでもなく、一つではない。

大小さまざまなものがあるが、ここでは、大きく3点に絞ってご説明したい。


具体的には、

  1. 登場人物
  2. プロセス
  3. 能力

の3点についてご説明する。


登場人物


1つ目のファクターは登場人物だ。

ここでは、具体的にイメージすることが大切になってくる。

なぜならば、我々がやろうとしたいることは、机上の空論ではなく、現実の課題を解決することだからだ。

 

早速、登場人物をイメージしてみよう。

具体的な登場人物で言えば、

  • 本人、家族
  • 行政
  • 民間事業者
  • その他、本人や家族に関わる大勢の人

などが思い浮かぶだろう。

 

もちろん、具体的な事例に当てはめれば、もっとたくさんの登場人物がイメージできると思う。

ここでは、頭の中に浮かんだ登場人物を、出来るだけ具体的に言葉にしていくのがポイントだ。

 

プロセス

 

2つ目のファクターはプロセスだ。

プロセスは目に見えにくいかもしれないが、「認知や行動」をベースに考えていくと分かりやすいと思う。

 

具体的なプロセスで言えば、

  • 課題の発生・認知
  • 情報の収集・認知
  • 相談
  • 申請
  • 給付・支援の開始
  • フォロー

などがある。

 

プロセスを考えるときは、このように認知や行動の順に考えることが重要だ。

1つ目の、課題の発生・認知などは、その端的な例だ。


プロセスはハイレベルで見ていくことが重要


プロセスを見ていくときに大事なことは、大まかなハイレベルのプロセスを見ていくことだ。


この点については、別途ご説明したいと思うが、プロセスに関する議論については、極めて重要な視点がある。

すなわち、瑣末なところを取り上げても、対処療法に終わってしまうということだ。

いわゆる、もぐらたたき状態になってしまうということだ。


プロセスにおいては、根本解決を目指すべき


プロセスにおいては、必ずボトルネックが存在する。

それを解決しなければ、問題は根本的には解決しない

そのためには、ハイレベルのプロセスの把握が必要であるということを、ここではお伝えしておく。

 

次回は3つ目のファクター「能力」


今回は申請主義を検討する上で重要となるファクターのうち、登場人物とプロセスについてご説明させていただいた。

次回は3つ目のファクターとなる「能力」についてご説明したい。

#5 申請主義の課題を解決するための処方箋 その5〜申請主義を検討する上で重要となるファクターとは その2〜 - さくらのソーシャルワーク日記